コンピュータがケーブルや電波でつながっているのとは違い、森の木々をつないでいるのは菌類...。
それは私たち人間の神経伝達物質と同じ化学物質であり、イオンがつくる信号が菌類の被膜を通して伝わるのである。。。(本文より)
目から鱗が落ちる形で始まった本書、物語は著者の生い立ちから始まり、所々で小出しで語られていくその核心に迫る研究の成果が読み手を惹きつけて止まない。
「マザーツリー 森に隠された「知性」をめぐる冒険」
読み進める中で、逆に興味深かったのは、これだけ明らかな研究成果が出ているのに、森林局の監督官は決してそれを受け入れようとはしなかったことろでした。やがてTEDに出演するほど認められ、同じように林業の在り方に疑念を抱いていた何人かの監督官からは相談を受けるに至るのですが、当初は誰からも相手にされず、研究の存続すら危ぶまれるような状況、結婚し支えあい、子供を育てながら研究に埋没していく姿は、決して順風満帆とは言い難いものに思えたのでした。
プライベートな心情が語られる場面も多く、私自身、少々文字を追いかけることに飽きてたのかもしれませんが、どうにも我慢できなくなってしまい、TEDを検索して、読んでいる途中でしたが著者の動画を見てしまうのでした。
動画の中で著者は、本で語ってきたように、エピソードを交えて研究の成果を面白おかしく語るのですが、人に働きかけて世の中を変えていこうと思うならば、どうやってそこまで辿り着いたかを知ってもらう必要があって、実はその熱量を伝えたかったのかなと思いました。これから環境と向き合っていこうとする次の担い手に向けて書かれた本なのだと。
本の中では、研究の成果だけでなく、生い立ちから現在に至るまで、あらゆるドラマが紡がれていくのでした。ここまで赤裸々に語られたら、誰もがその人柄を好きになるんじゃないかな、と。そんな人となりが読んでて微笑ましく、読了できてほんとに良かったと心から思う一冊でした。
TED日本語-スザンヌ・シマード:森で交わされる木々の会話